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2018.02.01

寺岡呼人『LOVE=UNLIMITED』インタビュー——テーマは、どんだけはしゃげるか?、どんだけやんちゃになれるか?

50歳の誕生日を迎える2月7日に、1年6ヵ月ぶりの新作『LOVE=UNLIMITED』をリリースする寺岡呼人。数多のプロデュースワークはもちろん、コンスタントにソロを作り出す彼の音楽的なルーツがぎっしり詰まった本作についてはもちろん、赫々たる盟友、先達を迎え開催される「寺岡呼人 バースデイライブ 50歳/50祭」に寄せる想いを聞く。

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——他誌のインタビューで寺岡さんが、“ミュージシャンの50歳”を意識されたのが清志郎さんとCHABOさんのステージだったということを知ったんですが。

「自分が二十歳の頃って50代のミュージシャンというリファレンスがなかったんですよ。当時、たとえばユーミンさんにしても清志郎さんにしても30代半ばぐらいで。たぶんミック・ジャガーもまだ50になってなかったと思うんです。そういうリファンレンスもないまま、ある時、清志郎さんの35周年ライブに行ったら「俺たちもう50だってよ」ってCHABOさんが言って、“ええっ!?”っていうのはあったし、あの時の年齢になるんだっていうのは、なんか60になる時よりもきっと感慨深いものがあるなって思いますね」

——実際その歳を迎えるというのはミュージシャンとしていかがですか?

「これ、前、ユーミンさんが言ってたんですけど、時間というのは平等なんだって、まさにそうだと思って。絶対、誰だってこの時を迎えるし、この時間を過ごすっていう意味では、どんな人も平等だなって考えてるんで、ある意味、意外に自然体というか(笑)、しょうがないっていう感じですけどね」

——そして最近、作品のリリースがコンスタントじゃないですか。何か思い当たる理由はありますか?

「作り方の意識が変わったというか、いいものができたら出すってやってたら永遠に出せないと思ったんじゃないですかね。とにかく作るっていう風にシフトしていかないと、特に僕は一人でやってるんで、何かタイムキーパー的にお尻を叩いてくれる人がいるわけじゃないから、自分でそこを決めてやるしかないので」

——プロデュースワークはもちろん、寺岡呼人のソロ作品が出続けることが大事であると?

「自分の中で、それがひとつの原動力、全ての源になってるなっていう実感もあるので、一生懸命そういう風に自分で自転車漕いでる感じですかね」

——新作を聴いて、改めて寺岡さんの音楽性というのはポップスの中のいろんなジャンルの中でもかなりポピュラーなものが詰まっているんだなという印象を持ちました。

「きっとスタンダード感が好きなんですよね。たとえば車にしても古い車が好きだったりとか、時計も古いのが好き、オーディオもカメラもファッションもちょっと古い、昔からあるスタンダード感のあるものが好きだったりとかして、結局、音楽もそうだと思うんですね。時代によってどんどん変わりながら、なんか古き良きものが好きっていうのは変わらないと思う。今回、それが特に出てるのかもしれない」

——古いものが好きっていうのはどういう要素なんでしょう?

「古いものに何かがあるといつも思ってるし、かっこいいと思ってるんでしょうね、おそらく。たとえば車でいうと、たぶん技術的なものとか燃費とかでいうといまの車の方が当然いいんですけど、使ってる鉄板ひとつとってもドアの重さのひとつにしても、昔の手作りな感じの方が“車に乗ってる”って感じがするし、デザインも昔の車の方が全然いいし。そう考えた時に一体何が進化して、何が衰退してるんだろうと思ったりもするんですけど、そういうのは音楽にしてもファッションにしても、僕は持ち続けてる感じはありますよね」

——ギターとか、ヴィンテージがいいのは明確に理由がありますし。

「そういう意味では、僕は「GOLDEN CIRCLE」ってイベントをやってきた中で、ひとつの裏テーマに“三世代”っていうのがあって、この人のルーツというかバックボーンにはこういうものがあるっていうのをステージで見てもらいたいっていうのは、同じ感覚だと思うんです。たとえば海外のアニメ、ディズニーとかピクサーとか見ててもちゃんと映画に紐づいた音楽があるじゃないですか。ランディ・ニューマンが『トイ・ストーリー』の主題歌であったりとか、『ウォーリー』だったらルイ・アームストロングの音楽が流れてきて、ちっちゃい子供がルイ・アームストロングの音楽を自然に浴びるっていうか、文化の継承っていうものが自然にできてると思うんですよね。いま、日本に住んでるとよほどそこを掘っていく人がいないといけないだろうし、僕はそういう意味では自分で掘ってきてたと思うんですよ」

——確かに今回のアルバムもいろんなルーツを感じました。バランスとして、いくつかの音楽的なテーマがあったんでしょうか。

「テーマというか、最近、結構、詞先とかタイトル先みたいな作り方をしていて、このタイトルができたらもう曲できた、みたいな、もうどっちかというとそっちが優先みたいなところがあって」

——ちなみに今回の収録曲でいちがん先にタイトルがパッと思い浮かんだのはどれですか?

「「仕舞支度」とか、あと「種まき人」。感覚で“あ、いいかも”って」

——「仕舞支度」ってタイトルと終活的な内容が同時に浮かんでくるんですか?

「終活っていうよりも、あと何年生きて、そのうちに何ができるんだろう?っていうのがポンと出てきて。でも結局、だらしない性格なんでそう言いながらもやらないんだろうなと思ったんですよね。で、やらないのはやらないで、やらないっていう人生もオツかな?と思って、あ、これなんかちょっと落語っぽくていいなと思って」

——この曲には春風亭一之輔さんをフィーチャーした別バージョンがあって。あれは寺岡さんのオリジナルを膨らませたんですか?

「そうですね。もともと僕が一之輔さんの大ファンで、この曲ができた時からちょっとやってもらいたいなと思いつつ、なかなか勇気が出せず遠慮してたんですけど、ちょうどアルバムも締め切り間際になった頃にたまたまご一緒する機会があって。で、その場で曲を聴いてもらって、歌詞渡して「ここの部分ちょっとやってくれませんかね」ってお話ししたらふたつ返事で「やりますやります」って言ってくれて。で、当日は何テイクも何テイクもやってくれて。感動でしたね」

——「種まき人」の発想はどこから?

「あの有名な「種を蒔く人」の絵を思い出して。あの蒔いてる人自身は誰かわかってないけれども、ああいう風に黙々と種を蒔いてる人は人類誕生以来ずっといて、畑も耕してそれを守ってっていう根本的なところはたぶん何年たっても変わらないだろうし、じゃあ僕にとってそれはなんだろう?とか、それは他の人たちにとってなんだろう?って考えた時に、それは静かに種を蒔く人と変わらないんじゃないかなっていう気がして」

——愉快な感じの「バンドやろうぜ」は10代の時の“バンドやろうぜ”とは違うわけじゃないですか。

「僕のもうひとつのメッセージとしては、「バンドやろうぜ」っていうのはある意味、仮タイトルで、楽器じゃなくても、みんないくつになっても挑戦したりとか、ワクワクすることをしようっていう意味も含めてなんですけどね」

——「大人はEぜ!」とも繋がってる感じがして。責任も伴うけど大人の方が楽しいぜ的なメッセージはそれこそ清志郎さんに近いものを感じますね。

「僕も清志郎さんを聴いて育ってきたんですけど、やっぱり唯一無二のあの感じを、自分は再現しようがないなって感じがあったんですけど、なんかそういうイズムみたいなものはこういう形でできるんだなとやりながら思いましたね」

——大人だからこそ自由なんだっていうのは今回のアルバムでは結構出てるのではないでしょうか。

「そうですね。どっちかというと自分へも呼びかけてる感じなんじゃないですかね。それを悟れないから歌にしてるんだと思いますけどね」

——ちなみに今回のアルバムの中でも新しいことができたなと思える曲は?

「1曲目はアメリカンポップスっていうのを想像した時に、『アメリカン・グラフィティ』みたいな雰囲気の、ああいうティーンエイジャーのための音楽で、ティーンエイジャーが聴いて、ティーンエイジャーが歌うみたいな。アメ車に乗ってたポニーテールの女子と、その50年代のファッションをしていた男の人たちが、あれから40年50年経ってどんな二人になってんだろう?ってなった時に、それをまたアメリカンポップスに乗っけて歌うっていうのが、自分の中ではちょっと新しいなと思った。ポップスなのにモチーフはもう歳をとったカップルみたいな」

——歌詞が素直ですよね。

「なんか落ち着きたくないって感じはあるのかもしれないですね。要は50になったからもうちょっと大人っぽい小難しいことを言うのは簡単だし。でも、特に僕はプロデュースとかもやってるんで、プロデュースとは逆で、自分でやるときは“どんだけはしゃげるか?”、“どんだけやんちゃになれるか?”っていうのがひとつのテーマではあるので(笑)」

——そして桜井さんが参加されてる「秘密戦隊☆ゴジュウレンジャー feat.桜井和寿」は、前回のアルバムに収録されてた曲のスペシャルバージョンですね。この曲は桜井さんが選ばれたんですか?

「前作でコメントを書いてくれた時に、この曲を気に入ってくれてたのもあるんですけど、今回誕生日ライブもあるんで、いっしょにやりたいなって。せっかくやるんだから音にしちゃいたいなと思って、僕の方からお願いしました」

——いちばん無邪気というか弾けた曲で。

「この曲を気に入ってくれたっていうのがちょっと意外だったというか、逆にだからこそいっしょにやると面白いかなと思ったんですよね。さっきも話したみたいに、挑戦というかやったことないことをやって、また自分の可能性って広がってくいくんで」

——寺岡さんが20代、30代ぐらいの時に想像してた50歳の姿と、今の自分の姿ってシンクロしてますか?

「あ、でも想像したことないんですけど、思いの外全然悟ってないなというか(笑)。もっといろんなこと悟っちゃうのかな?と思ってたんです。悩みとかももっと減るのかな?と思ってたけど、全然変わらないですね。二十歳の頃と。変わらないのと、逆に意識して考えないようにするっていう、それは処世術かもしれないけど、“ああ、考えてもしょうがないなら考えるのやめよ”みたいなね」

——時間の使い方が変わったんですかね?

「とある人に言われたのは昔だったら1時間かけて考えなきゃいけなかったことが、歳を重ねるとそれが1分で判断できる。ってことは、99個多く仕事ができることになる。要は時間が進むのも早いんだけど、効率も良くなってくるんだみたいなことは言ってて、なるほどなと思うことはありますけどね。確かにやりたいことを形にするまでの距離は短くなった気はします」

——なるほど。さて「寺岡呼人 バースデーライブ 50歳/50祭 」ですけど、早くに出演者は決まっていて、寺岡さんといっしょに作品を作ってこられたある意味身近なアーティストばかりですが、さだまさしさんは初共演ですね。

「自分の音楽人生の中でターニングポイントになった人たち、プラス、さださんは僕が小学校5年生の時に初めてコンサートを見た方なんです。特に近年は個人的に「トイレの神様」にしても、はなわくんの「お義父さん」にしても、さだイズムというものを継承——まあ、一方的にですけど(笑)——させていただいて。そういう方と「50歳/50祭」というタイミングでごいっしょさせていただけないかな?というところで実現しました」

——そしてゆずは言わずもがなですけど、最初の頃と比べると彼らとの関係性も変化してきましたか?

「当然変わりますけど、でも変わらないところもあって。本当にね、僕ら3人しかわからない空気感だと思うんですけど、そこはすごく独特だなと思いますね。あと、Kくんはまず人間的にほんとに素晴らしくて、そういうことを音楽でできる人なのかなって改めて感じますし、その才能を僕とやることによってさらに深めることができるんであれば、すごく光栄なことだなと思いながらやってます」

——そして盟友、桜井さんについては?

「とにかく尊敬しますね。過去を振り返らない感じというか、その素直さというか。皆さん、こんなに時間を割いて集まってくれるってことに対して、今後、自分の活動で恩返ししなきゃなって、気も引き締まる感じもあります。でももうお祭りなんで、なんか“祝ってください”って感じもあります。だから難しいことはあまり考えず、祝われたいなと(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香





寺岡呼人『LOVE=UNLIMITED』
2018年2月7日(水)発売
UMCK-1590/3,000円(税別)
ユニバーサルミュージック




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